「社長目線の社員教育を」というテーマで社員教育ポスターや読本・セミナーを販売するモチベーション・アップ株式会社という企業があります。
この会社についてのネット上での評判がなかなかすごく、同社のポスターが逆にモチベーションダウンになると盛り上がっています。
おそらくオフィスに貼り出されたのを見た、一部の従業員の反応なのでしょう。
「モチベーションアップ株式会社」で検索したときの1ページになかなかの数のヘイト記事が表示されます。
例えばこちらの記事です。
【社畜】モチベーションアップ株式会社のポスターがやばい…このポスターが貼られている会社はブラック?
ポスターと一緒に、それに対する感想が集められていますね。
実は私自身も同社のセミナーに参加したり、社内で読本が配られているのを読んだことがあります。
モチベーション・アップ社がどのようなポリシーで、どのような教えをしているかはある程度分かっているつもりです。
批判されている意見を見ると、なるほど一理あるな、と思うものもあったり、いささか言い過ぎているのでは?と感じるものもあったりします。
そこで今回はネットの意見や私の主観を交え、なぜ同社がこのような言われ方をしてしまうかについて考えてみます。
目次
ブラック企業の経営者に悪用されやすい
ブラック企業と呼ばれるような会社では、残業時間が異常に多く従業員の心身に悪影響を与えたり、サービス残業を事実上強要するということが良く起こります。
モチベーション・アップ社のポスターの中で「頑張ることや就業時間にとりあえず働くことが仕事ではなく、成果を出すことが仕事である」という旨のものがあります。
確かにこの心構えは、お金を稼ぐプロとして必要な考え方です。
しかし、「成果を出さないと仕事ではない」という考え方は、成果を出すためなら何時間でも残って働け、というような風潮を社内に作る危険性があります。
最悪の場合は、悪意ある経営者や一部社員から「成果を出すのが仕事だ、お前は成果も出していないのに定時に変えるのか」という発言が社内でまかり通る危険性があります。
もちろんこれは同社の意図するところではないでしょう。
しかし、悪意ある経営者や上層部が同社のポスターや教えに乗っかることで、ブラック企業と呼ばれるような働き方を強要されてしまう可能性があります。
つまり、一部のブラック企業経営者に同社のポスターが悪用されてしまう危険性があるといえます。
そのような危険性に従業員が反発してしまうのだろうと思われます。
注意や指摘を間接的に伝えることの弊害
人にモノを伝えたり教育するときは、言いにくいことであればあるほど直接顔を合わせて言うべきと言うのが基本です。
間接的に人を注意するのは望ましくないという記事をこのサイトでも以前書いています。
部下のコミュニケーションに長けた上司が得意な「間接的に伝える」方法
モチベーション・アップ社の教育ポスターを導入する企業の場合、「ウチの社内ではこれが出来ていない」と感じるからわざわざコストをかけて張り出すのだと予想されます。
そのため、正しいことであっても、張り出された側としては注意されているようで気分が悪くなるでしょう。
直接言われずにポスターだけ貼られると、「直接言いにくいし、面倒くさいから、お金出してポスター買って、これで教育しちゃおう」という経営者の意思を感じるのかもしれません。
このような教育はやはり面と向かってやるべきです。そうでないと言われる側の心が荒みます。
よく、「夜ご飯これで食べて」とお金を置く親が、子供の心を荒ませる原因として描かれることがありますが、それと同じ構造なんじゃないかと思います。
もちろんモチベーション・アップ社としては、ポスター販売で十分な教育は出来ないと考えているようです。
同社の管理職向けの教えの中で「言いにくいことは逃げずに直接言え」という教えもあるほどです。
実際、同社ではポスターの販売だけでなく管理職への研修も行なっています。
つまり、ポスターを張り出すだけでなく、まずは管理職に同社の教育エッセンスを注入し、それを現場社員に伝えつつ同時にポスターも張り出すことで、効果的に社員への啓蒙ができることになるのだと思います。
しかし、全部の企業がポスターとセットで研修も利用しているわけではなりません。
コストが安いし「ポスターだけ貼ればいくらか改善されるだろう」と甘く見通す企業、管理職への研修をケチってやらない企業などは、対面での啓蒙がなく、いきなり同社のポスターを見ることとなるでしょう。
そうなると前述のような反発を招くことは明らかです。
経営者の「棚上げ感」が生じる

「出来る管理職はまず自分が率先垂範する」という教えが一般の書籍や、同社の読本にもあります。
本来モチベーション・アップ社のポスターは、会社の管理職や経営者が率先垂範できていればわざわざコストをかけてまでポスター張り出す必要がないと言えるでしょう。
それを張り出すということは、社内で同社の価値観が浸透していないということがわかります。
そうなると、経営者や管理職が実践できていない場合、ポスターを見た従業員が「こんなポスターを貼る上層部こそ出来てないじゃないか」と反発する可能性があります。
そもそも「棚上げ(自分の落ち度に触れずに相手の非を責める)」は部下からの信頼を失いやすい行為です。
マウンティングする棚上げ上司は愚か、そうでない棚上げ上司は聡明
この状態になると、「自分たちは出来てないくせに、末端社員を働かせまくって搾取しようとしやがって」と感じさせてしまう危険性があります。
こうなるとモチベーション・アップ社のポスターは逆にモチベーション・ダウンになってしまうでしょう。
もし「ポスターさえ貼ればいい」と安易に考えていたとしたら、せっかくのモチベーションアップのためのポスターが逆効果になってしまいます。
会社組織で出世するための大いなる教えでもある
このように、一部の従業員に誤解されてしまいがちな悲しい宿命のモチベーション・アップ社のポスターですが、社内で出世を狙いたい人には非常に有効なツールでもあります。
こうしたポスターが貼られている企業では、社内でこのような意識がまだ浸透していないからだと言える・・というのは前述の通りです。
そしてこのポスターは社長目線の考えなので、この考えができる人は、社長が求める人材にドンピシャに当てはまることになります。
それでいて同社のポスターにここまでヘイトな意見が広がっているということは、あなたの会社でも、モチベーション・アップのポスターに対して拒否反応を持っている人がいるはずです。
そのため、あなたが同社の教えを理解して実践することが出来れば、社内で非常に目立ちます。
出世したい人は、同社のポスターのみならず、読本も読みましょう(個人でも買えます)。
この教えを実践することが出来れば、経営者に信頼される可能性が相当に高くなります。
また、同社のセミナーや読本は中小企業中心に相当数の支持を得ているので、あなた自身が転職したいという時にも助けてくれるでしょう。
同社のような価値観をもっていればどこの会社でも重宝されるはずですから。
問題は同社のポスターではなく、それだけに頼る経営者。
以上のように3つの点から、モチベーション・アップ社のポスターへのヘイト記事が起こる背景を考えてみました。
同社のポスターは基本的に勉強になるというのが私の考えです。少なくとも経営者には多くの指示を集めていることがわかります。
またヘイト記事のなかでも同社の教えに好意的な意見もあります。しかし、導入する企業の社風や経営者の見通しが甘い場合に反発しているといえるでしょう。
特にモチベーション・アップ社の教育の一部の内容と、ブラック企業とされる企業の社風に非常に相性がよいものがあり、それが悪用されてしまうということが危険ではないかと個人的には思います。
(まぁ余計なお世話もいいところですが・・)
もし同社ポスターが貼られており反発したい気持ちになっている人がいたら、同社にヘイトを向ける前に、その企業の社風について考えてみてもらうと幸いです。
でも、どうしても今の会社が「気持ち悪い」なら、転職も手です。
オススメ転職サイト・エージェント一覧【転職考え始めの人にもぜひ】
やる気はポスターよりも仕事の実践の場で行うのが一番です。