私は人事の仕事に関わっているのですが、中途入社する人の手続きを見ていると、彼らは前職での有休を十分に使わずに転職してくる人が多いです。
これは、とてももったいないことだと個人的に思います。
次の会社が決まって、かつ有給を消化している期間というのは、転職活動をする必要もなく、しかも給料が発生するため、堂々とゆっくりできる夢のような時間です。
せっかく転職するんだから、そんな夢のような期間を味わいたいですよね。
そこで今回は、転職する時に前職の有給をしっかり消化してから、次の会社に入るために必要なことをまとめました。
私自身、2回目転職しており、2回目の転職の時に一か月半ほど有給を満喫してから次の職場に行けました。その経験をもとにお話しします。
(ちなみに1回目の転職は、有休を一切消化せずに退職しました。無知な状態でブラック企業に勤めることほど恐ろしいことはありませんね。)
目次
現職の引継ぎプランを作る
それでは、有給をフルに消化し転職するためにはどうすれればいいでしょうか。まずは、必ずやるべきことがあります。
現職の標準引継ぎ期間を知る
それは現職の引継ぎ期間を自分なりに設定することです。
現職を退職する時に、告知をしてから最終勤務日まで、どの程度の期間かかることが多いかというのを知っておきましょう。
また、自分の職種の業務を引き継ぐ場合に、どのような内容をどれぐらいの期間かけて行うのかということを事前に知っておくべきです。
これは、普段仕事する中では知ることはないと思いますが、過去に辞めた人の引き継ぎを受ける機会があれば、イメージが湧くでしょう。
可能なら、辞める人がいた時に、告知してから最終勤務日までどれくらいかかったかと、どのように引き継ぎを進めたかを聞いておければ理想です。
これらの情報から、自分が退職を言い出してからどれぐらいの期間で、どういう内容の引継ぎを行って最終勤務日を迎えるかというのを知っておきましょう。
引継が1か月になるようにまとめてみる
このように、現職で退職を言い出してから採集勤務日までどのくらいかかるのがわかれば、あなたの転職が決まり、退職を告知してから、最終勤務日までにどれくらいかかるかがわかります。
できるならば、その期間を1か月にできないか工夫してみましょう。
具体的には、
引き継ぐ内容をリストアップする
各内容がどのくらいの期間が必要かスケジューリングする
出来る限り文章にまとめておき、簡単に引き継げるようにしておく
だいたいの会社(特に中小企業)は、退職の引継ぎをシステマチックにはしておらず、だいたいその場のノリや、いつもの慣習で行うことが多いです。
そこで、あなたが自らこのような作業をしておけば、会社が慣習通りに引継ぎを行う場合に比べていくらか早くなることが多いはずです。
このような工夫を行うことで、1か月程度で引継ぎを終えられるようにしておきたいところです。
ちなみに、引き継ぐことが少なく、もともと1か月もかからないのであれば、この作業は不要です。
転職は準備を入念に複数同時応募で
このような準備をしたら、実際に転職活動を始めていきましょう。
転職活動をするうえで、いくつか実践すべきことがあります。
在職しながら転職活動をする
これまでの話の流れ上、言うまでもないことではありますが、有給を満喫したうえで転職するためには、転職を決めてから現職に退職の告知を行いましょう。
退職後に転職活動をする場合、工夫しなくても有休はフルに消化できますが、有休消化中に転職活動をするため、純粋に休むことはできません。
また、次が決まる前に辞めてしまうと、「早く決めないと」と焦ってしまい、入社後に後悔してしまう危険もあります。
応募先企業から魅力的な人材と思わせる
有給をフル消化したうえで転職をするには、応募先企業に、自分が魅力的な人材であるように感じさせる必要があります。
その業界での経験があったり、有用な資格を持っていれば簡単なことではありますが、そうでない場合でも、自分のキャリアやセールスポイントをうまく伝えられれば十分可能です。
転職活動に自信がない人は、転職サイトの情報を参考にして、職務経歴書や面接の準備をしましょう。
大手の転職サイトでは、求人情報だけでなく。転職に役立つ情報がたくさん載っています。
ちなみに、当サイトの他のページでも転職活動のコツをまとめています
このような準備を進めたり、実際に何社か面接を受ければ、どうすれば自分をより売り込めるかがわかるようになります。
複数社並行して受ける
現職と並行して転職活動を進める場合はスケジュール的に少し難しいところがありますが、基本的に、三社程度同時に転職活動を進めるのが望ましいです。
というのも、複数社受けていることで、応募先にあなたが気に入られた場合、「他の企業に取られてしまう」という思考が働くため、入社時期などのこちらの要望を受け入れてもらいやすくなるからです。
また、「この企業がダメでも他の企業がある」という精神的な余裕があなた自身に生まれるというメリットもあります。
現職と並行して転職活動の準備を進めたり、複数社受けるのは大変ではありますが、これができれば、転職が決まった後にラクになります。
入社時期は「内定後3か月」
このように、転職活動を始め、実際に選考が進む段階で、いつから入社可能かという話があがります。
その際には、「内定後3か月程度」としましょう。
長い期間と思われますが、内定が出てから現職で退職交渉を進め、引継ぎ期間があるという事情であれば、そこまで非現実的なスケジュールではありません。
この辺の交渉は、エージェントを通じて行うとスムーズにいくことが多いです。
ちなみに、転職エージェントを使って転職するメリットは他にも多いので、転職にはエージェントを使うことをオススメします。
もちろん、応募先の企業から、「もっと早く入社してほしい」と言われることも多々あります。
「〇月入社」が採用の条件になっているケースもあり、こちらが折れなければならない可能性もあります。
ここで効果的なのが、企業側に魅力的な人材だと思わせ、かつ複数社同時に選考を進めることです。
応募先企業に、あなたをぜひ欲しいと思わせ、かつ他の応募先は3か月程度待ってくれるという状況ならば、企業側が妥協してくれることが多いです。
ちなみに、「もう来月から来てもらわないと困る」とゴリ押ししてくる企業は、人手不足の状況がかなり切羽詰まっているか、欠員募集で、辞める人がもうすぐいなくなるという状況のどちらかである可能性が高いです。
いずれにせよそういう企業に入ることはオススメできません。
ちなみに、3か月程度かかるという話は、できるだけ初期に応募先へ伝えておきたいものです。
だいたい一次選考で聞かれることが多いですが、履歴書に記載しておいたり、エージェントに伝えておきましょう。
退職交渉は強い意志で
さて、このようなステップで転職先から内定をもらったら、現職企業への退職の意向を伝えましょう。
普通の企業であれば、一回の退職告知で承諾されることはありません。
2回くらいは退職慰留の話が上がることが想定されますが、
もう次の会社が決まっている
その会社には〇月入社するという話になっている
ということを明確に伝え、具体的な引継ぎスケジュールや資料がそろっていることも示しましょう。
ちなみに、就業規則で「退職日の〇日前までには告知すること」という文言があるケースもありますが、大体は長くて2か月です。
内定後3か月後に入社するという状況であれば、内定後に退職告知をし、一か月程度で引継ぎを済ませるスケジュールを提示しましょう。
3か月以上長い規定は、そのまま鵜呑みにする必要はありません(そもそも就業規則では法的な拘束力はなく、法律では2週間前に告知すればよいことになっています)。
引き留めに負けないためのポイント
多くの職場は、退職を止めるために、色々な手を使ってきますが、それに負けないためのポイントをいくつかご紹介します。
後釜を決めるのは会社の仕事
「後釜を準備するまで待ってくれ」といわれるケースもありますが、それをうのみにすると、半年以上待たされたり、いつまでたっても準備しないケースもあります。
なかには、「後釜が決まるまで辞めないのが義務だ」などと言ってくる人間もいますが、後任を用意するのは、退職する社員ではなく、会社側の仕事です。
もう次が決まっているので、後任を準備してください。
後任の準備がすぐには無理なら、引き継ぐための資料は準備しておきます。
いずれにせよ、〇日を最終勤務日として有休を消化し、〇日付で退職します。
という内容を冷静にごり押しし、退職届と具体的な引継ぎスケジュールを提出することで押し切りましょう。
情に訴える場合は突っぱねるか・のるか
また、情に訴えて引き留めをしてくるケースもあります。
もしあなたが今の職場や上司にお世話になった思いがある場合は、有休消化の日を削ることで対応してあげてもいいでしょう。
そうではない場合は、高圧的にならないように気をつけながらお断りしましょう。
転職先への引き延ばしはNG
ただし、もし現職の要望を聞き、最終出勤日を引き延ばしたとしても、転職先に入社日の引き延ばしをすることはオススメできません。
3か月程度先の入社日を呑んでもらっただけでも、相当程度転職先に譲歩してもらっているので、それをさらに引き延ばすのはかなり印象が悪いです。
義理立てするのは、現職よりも転職先であるべきです。
引継ぎスケジュールは自分主導で
また、引継ぎのスケジュールは、あくまであなたの提案したもので行うように話をしましょう。
現職側の提示してくるスケジュールで行うと、採集勤務日が、ずるずると引き延ばされる可能性があります。
多少内容や順序が変わるのは問題ありませんが、期限だけは変えないようにしましょう。
以上のような点に気を付け、退職交渉を勧めましょう。
話が進まない場合は退職代行もあり
現職がブラック企業だった場合、あなたの退職希望に応じなかったり、話が全然進まない場合があります。
その場合は思い切って、最近流行りの退職代行サービスを使うという手もあります。
後任の社員へ引継ぎができなくても、十分な資料を用意したうえで、退職代行に任せて出社しないという方法もアリです。
現職が誠意のない対応をしてくる場合、それに付き合う必要はありません。
「現職が取り合ってくれないから話が進まない」という理由で、あなたの有給が使えないなんてことはバカげています。
相手のペースに合わせず、明確な意思をもって退職に臨めば、有給フル消化ライフが待っています。
エージェントと協力するとよりスムーズ
以上のように、有給をフルに消化して退職するためのステップを紹介してきました。
現職の引継ぎ期間を1か月程度にし、転職先に3か月後の入社を通せば、フルの有休消化ライフが送れるでしょう。
入社時期の交渉は、エージェントに協力してもらうとより円滑に進むのでオススメです。
ただし、なかには入社時期を早めてくる、企業側に立った話をしてくるエージェントもいます。
私は過去に、「早く次を決めないとダメですよ」とせかされたことがありますが、今考えれば、そのエージェントは自分の営業成績のことだけを考えていたように思います。
そういうエージェントに当たった場合は、変えてもらうか他の会社のエージェントに登録するのも手です。
このようなことに注意しながら転職活動を進めれば、有給休暇をすべて消化して転職をすることができます。
この期間は、一切働く必要がなく、収入の心配もない夢のような時間です。
少し手間はかかりますが、狙ってみる価値は大いにあるでしょう。