社会人経験が長くなるにつれて、スピーチを頼まれることが多いですが、苦手な人にとっては嫌なものでしょう。
「緊張して声が上ずったらどうしよう」「頭が真っ白になったらどうしよう」と不安になってしまう人は多いものです。
日本人は昔から「以心伝心」や「阿吽の呼吸」で、お互い分かり合うという傾向が強い民族です。
そのため、自分の意見を大勢の前で話すことに慣れていないと言えます。
しかし現在では、朝礼のスピーチや、会議でのプレゼン、結婚式での挨拶などを頼まれることがあり、避けては通れないものでしょう。
そこで今回は、スピーチが苦手な人のために、スピーチの苦手意識を克服するためのコツについてまとめました。
スピーチが苦手だ、嫌だという人はこの内容を参考にしてみてください。
目次
スピーチが苦手だと感じる理由
まずは、あなたがスピーチを苦手に感じる理由について分析してみましょう。
これには大きく分けて3つあります。
何を話していいかわからない
そもそも何を話したらいいか分からない、と悩んでしまいます。
普段から人前で話すという経験が無い人は、話す内容を決めること自体がスムーズにできません。
このような場合は、「スピーチの作り方」を意識して話す内容を一つひとつ決めていけば問題ありません。
聞き手の反応が気になってしまう
自分のスピーチがどのような反応になるのかが気になってしまいます。
自分の言葉に笑ってくれたり、うなずいてくれればいいですか、リアクションが薄かったり無反応だったりすると自分が否定されているようで怖くなります。
これは、スピーチによってあなたが周りから評価されるのを恐れているのです。
緊張してしまう
スピーチが苦手と感じる原因としてもっとも大きいのがこれです。
スピーチで緊張してしまうのは、「上手く話そう」と意識してしまうからです。
「上手く話して格好悪いことになりたくない」「失敗して恥ずかしい思いをしたくない」という気持ちに支配されてしまいがちです。
緊張は「自分をよく見せたい」という思いが原因になって生まれます。
自分に自信が無い人や、完璧主義の考えが強い人ほどスピーチへの苦手意識は高い傾向にあります。
人前での発表が苦手な人にありがちな3つのパターン
上でご紹介した内容のうち、「何を話したらいいか分からない」という状態でスピーチをしてしまうと聞きにくい話になってしまいます。
具体的には、次の3つのような状態になります。
これらはどれも、聞き手にとって聞きにくい話し方であるため、事前に話す内容を固めることが大切です。
同じことを何度も繰り返す
原稿を丸暗記してスピーチをしているときに、間違って同じ場所を繰り返してしまったりだとか、言いたいことが伝わっているかどうか不安で、同じことをもう一度言ってしまうだとかの場合こうなります。
言われた相手にしてみれば「くどい」と思われ、頭の中にすっと入ってこなくなります。
相手が集中していれば一度言うだけで理解してくれます。もし強調したい場合はたとえ話を使ったり、実例を挙げるなどの方法を使いましょう。
話がいろいろ飛んで聞き手が迷子になる
頭の回転が速く生真面目な人は、話すときに補足説明を細かくしすぎてしまい、その結果本筋の話が伝わらなくなるという問題を起こしがちです。
本を読むときと違い、スピーチは話し手のペースに聞き手があわせます。
そのため、本筋に関係のない補足をつけすぎるとややこしくなります。
原稿がハッキリしていない状態で話しをするときに、何とか尺を持たせようとして関連が薄い情報をいきなり付け加えてしまうと、伝わりにくいスピーチになってしまいます。
語尾が同じ
これは書き言葉にも言えることなのですが、同じ語尾(「~だと思います」など)が何回も連続して続く場合、リズムが悪くなり相手に違和感を持たせてしまいます。
1対1で話すときに同じ語尾を何回も続けることはほとんどないはずなので、自然に話している分にはこれを気にする問題ありません。
しかし、人前で話すとなると、慣れていないことから語尾を同じにしてしまうことがあります。
聞き手のリアクションを気にして笑いを取りに行く危険性
また、聞き手の反応が気になるときは、いい反応を引き出そうとして聞き手を笑わせようと考えるかもしれません。
しかし、スピーチに自信が無いうちは、無理やり笑いを取りに行くのは危険です。
これは失敗すると当然スベります。
お笑い芸人のようにスベったことを上手く笑いに転換できればいいのですが、それも出来なかった場合は悲惨な空気になります。
そして悲惨な空気に呑まれて動揺し、しどろもどろになるという悲劇はとても多いです。
よほど自信が無い場合は、笑いをとりに行かないほうがよいです。
ちなみに、リスクなく笑いをとりたい場合は2つ方法があります。
「笑いを取りに行かない」という方法
スピーチで笑いを取るには、一発ギャグのようなコミカルな言動をする必要はありません。
話に共感しさえすれば笑いが起きます。
例えば
「今日は天気が悪いですね、大丈夫だろうと思ってかさを持たずに行ったら濡れちゃって、朝の自分を叱ってやりたいです」
というくらいのちょっとした話でも笑いが起きます。
「笑いを期待しない」という方法
これは落語をイメージしてほしいのですが、落語の登場人物の発言には「本人にはそのつもりがないのに、傍から見ると面白い発言をしている」というパターンがあります。
これと同じようなイメージで、あなた本人は真面目なトーンで話しているけれど、聞き手にとっては思わず笑ってしまうようことを言うのです。
例えば
「先日理容室で髪を切ってもらったのですが、前髪を短くしすぎまして変になってしまいました。
突然ワカメちゃんのような髪型で出社し戸惑わせてしまったみなさん、申し訳なかったです。」
という場合、本人としては、笑いを求めるというよりはお詫びがメインになっているので、ウケなくても問題ありません。
このように、聞き手が笑っても笑わなくても、そのまま話は進められますので、ウケなかったとしても変な空気になることはありません。
また、むやみに誘い笑いを求める方法も避けなければなりません。
スピーチでは自分が笑顔になることが大切、とはよく言われます。
しかし笑いを取ろうとして、大して笑えないような内容で誘い笑いをしてしまう(特に自虐的なもの)はオススメできません。
たいして笑いが取れないような内容を無理に話す必要はなく、ただ明るくニコニコしながら話していけばよいのです。
それだけで十分好印象を残せます。
緊張は良いものだと考えよう
そして、スピーチを苦手に感じる理由として一番大きいのが、「緊張するのが嫌だ」というものです。
実際緊張によって普段どおりに話すことができないことは、スピーチに限らずよくあります。
しかし、緊張は人間にとって悪いものではありません。
前でも少し述べていますが、緊張は「自分をよく見せたい」という意識が高まると発生するものです。
その仕事に緊張するということは、無意識のレベルでその仕事を真剣に捉えている証拠です。
そのため、緊張を悪いものとは捉えず、前向きなものだと考えましょう。
その上で、これから紹介する「緊張との向き合い方」をマスターすれば、緊張を力に変えることが出来ます。
緊張と向き合うための方法
スピーチへの苦手意識を克服するためには、緊張を力に変えることが重要です。
では、具体的にはどうすればいいのでしょうか。
そのための方法を5つ紹介します。いきなりすべてできるようになるのは難しいので、今のあなたにあった方法を取り入れてください。
「主役は聞き手」を認識する
そもそも緊張してしまうのは、スピーチをするときに「失敗したくない・恥をかきたくない」と「自分に意識が向いている状態」だからです。
しかし実際、聞き手の中であなたのスピーチについて注目している人はどれだけいるのでしょうか。
例えば朝礼のスピーチで、あなた自身が聞き手のとき、話し手のしぐさやスピーチの様子を見て「あっ失敗してるな」「話し方が下手だな」とチェックしているでしょうか。
ぼんやりしててあんまり話を聞いてなかったりすることも多くないでしょうか。
正直、あなたが思っているほど、あなたの話に聞き手は興味がありません。
また、たとえその時はちゃんと話を聞いてくれていたとしても、だいたいはその内容を忘れます。
あなたが多少失敗しても、そんなことは忘れます。あなたの失敗を覚え続けているほど、人はあなたに興味はありません。
そのため、「自分が上手く話せるかどうか」を意識する意味はほとんど無い、と考えましょう。
スピーチの主役は聞き手であることを認識し、その聞き手にどういう話を伝えるかということに集中するべきと考えるのです。
丸暗記しない
スピーチで話すことを丸暗記してしまうと、当日は「丸暗記したはずの内容をミス無く思い出せるか」ということに意識がいってしまいます。
そうなると思い出せなくなったときにパニック状態になります。
また、丸暗記した原稿をスラスラ話しても、聞き手の心には響きません。
そうではなく、あなたが自分の言葉で、その場の空気や聞き手の反応を感じながら言葉を発していくほうが聞き手に届くスピーチになります。
スピーチの目的は、「聞き手の心を揺さぶり、行動を変えること」であり、「上手にしゃべること」ではありません。
そのため、丸暗記のように覚えた原稿を一字一句間違えずに話すよりも、口下手でも、途切れてもいいので、話し手が聞き手のほうを見ながら自分の言葉で話していく、という話し方のほうが聞き手の共感を呼びます。
丸暗記はスピーチの緊張度を高めます。当日はその場の雰囲気を見ながら自分の言葉で話すという意識を持ちましょう。
あがっている自分を客観視する
緊張を抑える方法として、「緊張している自分を客観視する」という方法があります。
これは、「いま緊張している自分自身」を一つ上の視点から眺めてみるという方法です。
例えば、緊張しているなと感じたら、
「緊張しているということは自分の中でそれだけ真剣に考えているということだな」
「だいたいついつも緊張は、スピーチが始まったら収まっているだろう」
「びっくりするくらい唇白いわ(笑)」
「他にも緊張している人はいないかな・・」
という風に考えてみるのです。
「緊張している、どうしよう」と慌てるのではなく、周りの様子を見渡してみたり、自分から第三者から見たときにどんな風に映るだろうかと考えます。
最低限の目標を決める
緊張というのは、「緊張を押さえないといけない」と思うとますます緊張してしまいます。
そこで、緊張している自分から意識をそらすために、その日のスピーチでの目標を定めるという方法です。
例えば、「話の最中に3人と目を合わせる」「このフレーズは必ず話す」など、スピーチを話しきる途中に、比較的簡単に出来る目標を定めて、その達成に意識を向けるという方法です。
このような目標を定めることで、「上手く話せなかったらどうしよう」という意識になりにくくなります。
聞き手の観察をする
これは話している最中の対応方法ですが、周りを見渡して、自分の話を熱心に聴いてくれるような人を探して、その人に向けて話すという方法があります。
自分の話に良いリアクションをしてくれる人が居ると、自分の話に自身が持てると思います。
そうなるとだんだん緊張も解けていきます。
逆に、熱心に聴いている人をみると緊張してしまうという人は、目を合わせてくれなかったり、リアクションが薄い人を見つけて、その人を見ながら話すという方法もあります。
目線のやる先を安定させれば余裕も生まれます。
リアクションが薄い人を木か何かだと思い、それにむかって声をぶつけるつもりで話していけば緊張もしにくくなります。
以上の5つの方法によって、スピーチのときの緊張を和らげることができるでしょう。
そもそも、緊張をコントロールするはかなり難しいものです。
そこで、無理やり抑えようとするのではなく、緊張している自分を見つめたり、他に意識をそらすという方法で間接的に緊張を抑えましょう。
スピーチの苦手を克服する練習のポイント
このように、緊張との向き合い方についてご紹介してきましたが、スピーチの苦手意識の克服のためには練習を重ねることも必要です。
スピーチをしている自分の姿を冷静に見て、(スマホなどで録画することが一番いいです)以下の5つのポイントが出来ているかどうかをチェックするといいでしょう。
聞き手の顔を見ているか
原稿を読んでいたり、緊張しているために、顔がうつむきがちなのはよくありません。
聞き手のほうを向いて話が出来ているかどうかによって、聞き手にとっての印象が大きく変わります。
声が出ているか
緊張してしまうと、普段どおり話しているつもりでも声が出にくくなります。
声が小さいと聞こえにくいうえ、自信がないように見えてしまいます。
声を遠くまで届けるつもり(聞き手の一番後ろの人に届けるつもり)で発声するのと、複式呼吸を身につけ、おなかから発声するつもりで声が出せているかチェックしましょう。
早口になっていないか
原稿を丸暗記している場合に特に起こりがちですが、緊張のあまり早口になってしまうことがあります。
早口だと聞き手が内容を理解できなくなり、話しているあなたも自分で何を言っているのか分からないという状態にもなります。
ゆっくりすぎるくらいのスピードでちょうどよいものです。
「間」をとっているか
スピーチが上手な人は、話すペースがゆっくりですが、さらに「間」をとって話ができています。
スピーチにおいて「間」を取るのが非常に重要です。
間を取ることで聞き手の注意をひきつけることができます。
話が変わるときや、大切なことを言う前・言ったあとに「間」を取ることで、聞き手にうまく印象付けることができます。
よい表情や身振りができているか
オーバーアクションは不自然ですが、無愛想な表情や直立不動も不自然です。
話の内容に合わせて表情の明暗を多少つけることや、大きさを示すときに手を使うこと、手は演台の上におくか、腕を垂直に曲げ、脇を少し空け、手のひらを上に開いた状態にすなどの自然な定位置であるかどうかを確認しましょう。
イメージトレーニングで人前で話すのが苦手ではなくなる
このように、スピーチの苦手を克服するための練習について方法をご紹介しましたが、その練習として、イメージトレーニング(イメトレ)も効果的です。
もちろん、実際に聞き手がいて、「最初から最後まで通して話す」という場数を踏むのが最も上達します。
しかし、実践の場がなかなか取れない場合は、本番に近いような環境で何回も練習することで実践ほどではないにしろ慣れてくるものです。
イメトレは、移動中や、お風呂やトイレでも行えます。
実際に頭の中で自分が話している場面をイメージし、はじめから終りまで頭のなかで話してみるのです。
「イメトレだけで上手く話せるようになるかよ」という意見もあるかもしれませんが、イメトレとなめてはいけません。人間の脳は、実際に体験していないことでも体験しているかのように錯覚を起こします。
例えば、ある実験で、「暖炉に入れた鉄の棒を見せ、その後目隠しをして熱くない別の棒を当てたところ、熱された鉄の棒を当てられたと勘違いしてみみず腫れができた」というものがあります。
これは、実際に熱い棒を当てられていないにも関わらず、脳が「熱い棒を当てられた」と思いこんでしまったために、体が反応してしまったということを意味しています。
つまり、十分なイメージを持って頭の中で話すことでも、実際に話すのに近いくらいの練習になると言えます。
場面、聞き手の数とメンバー、自分の場所、スピーチを振られる言葉・・出来る限り本番のイメージを頭のなかで描けば描くほど、本番で話すようなイメージが脳のなかで働き、それを繰り返すことでも慣れることができるようになります。
スピーチは必ず上達できる
このように、スピーチが苦手だと思っている人も、イメトレや色々なポイントを押さえて練習することで、スピーチは必ず上達します。
「自分はスピーチが苦手だ」と思い込む必要はありません。
人は、どんなことでも練習をして場数踏めば必ず慣れていきます。慣れていけば必ず上達します。
そして、スピーチが上達すれば、聞き手の心を動かし、行動を変えさせることができるようになります。
その快感は他では味わえない独特のものです。
どうせやらなければいけないスピーチならば、この記事の内容を参考にして練習し、苦手を克服してみてはいかがでしょうか。
スピーチのネタはこちらから