上司であれば部下の退職を説得し、引き止めたいと思う場面にぶつかることがあるでしょう。
企業にとって社員の退職は困ることが多く、代わりの人員を探したり、残るメンバーへの影響を考えたり・・となるとなかなか憂鬱なシチュエーションですよね。
説得によってなんとか退職を思いとどまらせたいと考えることも多いはずです。
しかし、はっきりと退職の意向を示された場合、思いとどまらせるのは簡単ではありません。
有名な経営者の本を読んでみても「熱意をもってぶつかりなさい」という教えもあれば、「一度そのような宣告を受けたら、止めても悪影響なので割り切ったほうが良い」という意見もあります。
そのため、上司にとって、退職を考える部下に対してどうするのが良いか悩んでしまいがちです。
しかし、退職の意向を伝える部下への面談では、どう説得するのかということが退職を引き止める確率に大きく影響すると私は考えています。
そこで今回は、退職を考える部下を説得するためにどのように話をするべきかという点についてまとめました。
部下の退職に悩んでいる人は参考にしてもらえればと思います。
目次
部下からの「相談があるんですが・・」は退職のサイン
「退職を言い出す部下を説得するには、話を聞くときの心構えが大切だ」ということを先ほど述べました。
上司の心構えができていない状態で退職の相談を受けてしまうと、上手く対応することができず、説得に失敗してしまう可能性が高くなります。
そのため、万全の心構えをしたうえで話をすることが必要です。
心構えをするためには、部下から退職の話を切り出されるサインを知ることが必要でしょう。
そのサインというのが、「折り入って相談があるんですが、お時間いただけないでしょうか?」という言葉です。
簡単な相談や、仕事内容の話であればその場ですぐしてしまうのが普通です。
しかし、「相談があるんですが・・」と声をかけられ、改まって話しの時間を希望する場合は、退職に絡んだ話であることが多いと考えておきましょう。
部下の退職を引き止めるためには面談での心構えが重要
では、このようなサインが部下から発せられた場合はどうすればいいでしょうか。
まずは1対1でじっくり話す面談の場を設けましょう。
その日のうちに時間が取れなくても構いません。むしろ早く実施しようとして、心構えができていないのに話をしてしまうくらいなら、少し待たせてしまってでも心構えをじっくり作ったほうがいいでしょう。
そして実際に面談に臨む時に意識するべき3つのポイントをご紹介します。
①説得しようとしてはいけない
逆説的ですが、退職を考える部下を何とか説得して言いくるめようと考えてはいけません。
そのような姿勢は部下にバレます。そして「この上司は、自分の保身や会社の都合を考えて退職を止めようとしている」と感じてしまいます。
部下にこのように感じられてしまうと、「この上司に言いくるめられてしまうと辞められない」と思ってしまい、こちらの話を満足に聞いてくれなくなります。
②原因は会社側にあると考える
実際に部下の話を聞く時には、部下の考えが甘いと感じる場合もあるでしょう。
辞めたいと考える原因が部下自身にあるなんてこともあります。
しかしそんなときでも、「こいつはダメだ」と内心部下をバカにするのはよくありません。そのような思いは必ず表にでると考えましょう。
そしてそれが部下に伝わってしまうと心を開いてくれなくなります。
説得して退職を止めたいと思うならば、どんな主張であれ、部下が退職を考える原因は会社にあると考えましょう。
③退職を考えた経緯を聞く
以上の2つのポイントを押さえた上で、部下と面談するときには「退職を考え始めた経緯」について聞きましょう。
退職理由について聞いてしまうと、辞めることが前提のトーンになってしまいます。
また、理由を聞きそれに対して説得するような言い方をしてしまうと、部下は心を開いてくれません。
説得しようとせず、会社の体制に原因があると考え、部下が退職を考えた経緯を聞くというスタンスで面談を行うことで、部下が心を開き話をしてくれるようになります。
退職を考える部下には「お悩み解決」という姿勢で対応する
このように、退職を考える部下には説得しようとせず、会社側に問題があると考えましょう。
そうすると、部下に対して「おまえの考えは甘い」「辞めてもうまくいかないぞ」というような上から目線の発言がなくなります。
そうすると、自然と部下の気持ちに寄り添ったスタンスで話をすることができます。
そのうえで部下が退職を考えた経緯を、途中でさえぎらず最後まで聞きましょう。
そうすると、部下がどのようなことで悩んでいるかがわかるはずです。
そこで判明した「部下の悩み」を解決するにはどうするべきか、を一緒に考えるのです。
このとき、部下の悩みが退職することによってしか解決されないのであれば、その場合は仕方ないと考えましょう。
そもそも、退職を言い出す部下を説得して慰留させるのは難しいものです。
退職しないと上手くいかない状況なのに、会社の都合を理由に引き止め続けることはかなり難しいでしょう。
それよりも、「退職以外の選択で部下の悩みが解決されないか」を真剣に考えてみるべきです。
このような姿勢は部下にとって「この上司は会社のことではなく、自分のことを真剣に考えてくれている」と感じさせることができます。
その上で実際に退職以外の解決法を示すことができれば、慰留してくれる可能性が高くなります。
部下が退職を考える2つの理由と対応方法
このように、退職を考える部下を説得するには、言いくるめようとせずに悩みごとを聞き、その対処法を一緒に考えるというスタンスが大切です。
そこで、部下が退職を考える理由としてよくあるパターンと、それの対処法をご紹介します。
実際に部下から退職を言われてしまった場合に参考になると思います。
①現実的な問題
本人としてはストレスは無いものの、生活をする上で今の環境のまま働き続けることが難しくなってしまう場合です。
例)結婚が決まり、家庭にはいることになった
・配偶者の転勤が決まり、ついていくことになった
・今の給料に満足しておらず、よりよい待遇で働きたいたい
このような理由の場合は、原因となる事項を聞き出し、その問題が解決されるような対処が取れれば退職をとめることができるでしょう。
例)結婚が決まり、家庭に入るために会社を辞めたい
結婚するので家庭に入る
→今のフルタイム勤務では仕事と家事の両立が出来ない
→時短で両立ができる勤務ならどうだろうか?
→昼過ぎにはあがる勤務体系で継続
例)より待遇のよい仕事が決まったので転職したい
今の待遇に満足していない
→給与の多さよりも自分 の時間が多く取れる働き方をしたい
→残業が少ない部署に異動できたらどうだろうか?
→給与は減るが残業の少ない部署で継続
このように、それぞれの理由に対して、できる範囲で問題の解決ができれば、退職を慰留させることができるでしょう。
②感情的な問題
現実的な理由とは逆のパターンです。環境的には働き続けることができるものの、精神的にストレスがかかっており、退職を考えてしまうパターンです。
例)上司が嫌で、一緒に仕事をしたくない
・任されている仕事に自信が持てず、別のことに挑戦したい
・入社前に自分が思っていた働き方と現実が違う
この場合はまず、本人の話を聞いてあげること自体が一つの解決法になります。精神的なストレスは、人に話して理解してもらうことで軽減されるものです。
そのうえで、本人が抱えている不満や不安を和らげるためには、どのような方法があるかというのをアドバイスしたり、一緒に考えたりするということが必要です。
これによって「私はあなたのことを気にかけているよ」というメッセージが伝わります。
またもう一つ重要なのが「今抱えている不満や不安は、たとえ転職しても起こりえるものだよ」というメッセージを伝えることです。
人間関係のこじれの原因が部下本人にもあるならば、転職先の職場でもまた同じトラブルが起きてしまうでしょう。
このことを、「部下に会社に残ってほしいから」というスタンスで話すのではなく、「部下本人へのアドバイス」という体で行いましょう。
そうした対応をとることで、「たしかに転職しても大変かもしれないし、支えてくれる人もいるから頑張ってみるか」という気持ちになってもらうことを狙っていきます。
このように、部下が退職を考える背景には、物理的な問題と感情的な問題の2種類に分けることができます。
面談の中で信頼関係を作りヒアリングすることで、部下が退職を考える経緯が聞けるはずです。
その理由はどちらかに分類できるはずなので、それにあわせて対応の方針を考えましょう。
部下の退職を止めるためには上司の心構えが8割
部下が退職してしまうとなると、上司としては困ることが多く、何とかして説得して引き止めたくなるものです。
しかし、会社の都合のことだけを考えて部下を引き止めるような言い方をしても、部下の心を開くことができず、結果退職をとめることも難しいでしょう。
上から目線で部下を論破し説得しようというスタンスではなく、部下本人が退職考える原因となる悩み事を聞き、その解決法を考えてあげるという姿勢で話すことが重要です。
部下の退職をとめるための面談は、「何を言うか」よりも「どのようなスタンスか」ということが非常に大切です。
「説得してやろう」という考えを捨て、「部下の悩みを解決するにはどうしたらよいか」という姿勢で臨みましょう。
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