組織の中で仕事をしていると、部下などに仕事を振るという状況が出てきます。
仕事は一人でできるものではなく、必ずと言っていいほど他の人と力を合わせて行ないます。
そのなかで、自分が抱えている仕事を誰かに振るべきという状況もあるのですが、この「仕事を振る」ということが苦手な人がとても多いです。
しかし、自分ひとりで仕事を抱え込んで納期が遅れたり、体調を崩してしまってはせっかく頑張ってもビジネスでは評価されません。
そこで今回は、なぜ仕事を振るのが苦手だと感じるのか、どのように仕事をふるといいのかという点についてまとめました。
「本当は仕事を振りたいけど振れない」「そもそも仕事を振る必要なんてない」と考えている人は参考にしてください。
目次
仕事を抱え込む人の心理
仕事を周りに振ることをせず、一人で抱え込んでしまうのは、振る方法が分からないというよりも、「振りたくない」「振ってはいけない」と考えてしまう場合が多いものです。
つまり、マインドや考え方に問題がある場合が多いと言えます。
では、仕事を振れずに抱え込んでしまう人にはどのような心理が働いているのでしょうか。これには、主に3つの心理が考えられます。
①自分でやったほうが早い
仕事を振るときには、仕事内容を説明したり、相手の質問があれば答えるという手間が発生します。
また、振った仕事の仕上がりも自分で行なったものよりも悪く、修正や最悪やり直しをしなければならないこともあります。
こうした理由から、「人に仕事を任せるよりも、自分でやったほうが無駄が少なくていい」と考えてしまいがちです。
②他人に活躍させたくない
仕事を振ることでその相手が良い仕事をした場合、その相手の評価は高くなります。
それによって自分への仕事の依頼が来なくなったり、自分の立場がなくなってしまうということ恐れてしまいます。
いま自分が抱えている仕事を誰かに渡してしまうと、「自分の立場が危うくなってしまうのではないか」という不安から、仕事を周りに振らないことがあります。
③罪悪感を感じる
社会人になるまでに、「自分に任された仕事を人に振る」ということを教わる機会というのがなかなかありません。
むしろ「自分が努力して、人を助けることが大切だ」と教わります。
会社の中で上司になる人は、頑張り屋で責任感のある人が多く、学校時代のこのような価値観が強く刷り込まれており、人に仕事をさせることに罪悪感を感じる傾向にあります。
また、仕事を振ることに後ろめたさを感じていると、「断られたらどうしよう」「頼むのが気まずい」とも感じるため、仕事を振りたいと思っていても声をかけられない状態になりがちです。
仕事を振るのが上手い人が成功する
このように、色々な理由で「仕事を振る」ことを苦手に感じる人が多くいます。
しかし、人間一人でできることには限界があります。大きな仕事をしようとすればするほど、関わる人数は増えてゆきます。
このとき、自分ひとりが良い仕事をしていても周りの人が成果を出していない場合は大きな成果を上げることはできません。
逆に、部下一人ひとりがしっかり成果を出していれば、自分自身がプレーヤーとして直接成果を出す必要はありません。
つまり、自分がいちプレーヤーとして優秀な仕事が出来る人より、周りのプレーヤーに優秀な仕事をさせられる人のほうが大きな成果を上げられることになります。
そして、会社組織では、あなたの仕事ぶりが評価されると、上司としてチームをまとめ、チームとして成果を出すことが求められるようになります。
より大きな成果を出してもらうために、チームをまとめる立場を与えられるのです。
このとき、自分自身が仕事で成果を出すために必要とされる力と、チームリーダーとして成果を出すために必要とされる力は異なります。
そのため、組織においてある一定レベル以上で成功しようと思うと、リーダーとしてチームの成果を出させるための力が必要になります。
つまり、最終的に組織のなかで評価されるのは、「自分がプレーヤーとして成果を上げられる人」よりも「チームを率いて部下に成果を上げさせられる人」となります。
そして、部下に成果を上げさせるためには仕事を上手に振る必要あるため、上手く仕事を振れる人が成功するのです。
仕事の振り方のコツ
それでは、仕事を振るうえのでコツやポイントはどのようなものなのでしょうか。
たくさんありますが、ここでは3つご紹介します。
①丸投げをしない
「上司から仕事を丸投げされて困る」という悩みはよく聞きます。世の中には残念ながら仕事を振るのが下手な上司が多く、その最たる例が「丸投げしてしまう」というものです。
丸投げとは、振る仕事について十分な情報を与えず、質問を受け付けない(「自分で考えて完結させてよ、私は詳しく知らないから」みたいなノリで仕事を振る)という仕事の任せ方をいいます。
丸投げをされてしまうと、その仕事を実行するのに苦労するだけでなく、「仕事を押し付けられた」という印象を与えてしまい、やる気を下げてしまいます。
このような仕事の振り方をする上司は、チームのモチベーションを下げてしまいます。
そのため、丸投げだと感じられないような仕事の振り方をしなければなりません。
②期限と中間報告のタイミング・優先順位を示す
その仕事がいつまでに仕上げる必要があり、どの段階までできたら一旦報告してほしいのか、今抱えている他の仕事との優先順位をどうするのかということを明確に示しましょう。
一つの仕事しか抱えないという人は少ないものです。たいていは多くの仕事を掛け持ちし、同時進行的に進めていきます。
そのため、仕事にはそれぞれの期限と優先順位を意識させないと、締め切りを守れなかったり、効率の悪い仕事のしかたになります。
また、中間報告を受けないと、イメージと全く異なる仕事をしてしまう危険性があります。
適切なタイミングで確認するため、どの時点で進み具合を報告させるかを示しましょう。
③本人の適正に合わせて振る
適材適所という言葉があります。
それぞれの社員で得意不得意や興味関心が異なりますが、それにあわせた仕事を任せることで仕事の成果が出やすくなり、また、仕事を振られた本人のモチベーションも上がります。
日ごろから周りの人の適正を良く見たうえで、よりプラスの効果が見込める相手に振るという意識が重要です。
以上のことを考えることで適切に仕事が振れるようになるでしょう。
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仕事を任せることで得られるメリットを考えよう
ここまで、仕事を振ることの重要性やコツをご紹介してきましたが、いかがでしょうか?
まだ「そんなこと言われても仕事は振れないよ」とお考えでしょうか?
そういう方は、「人に仕事を任せることで得られるメリット」を考えてみましょう。
①チーム全体の力が上がる
上司が自分の部下に仕事を任せることで、その部下の仕事の能力が上がります。
時には能力の向上を狙い、あえてその部下にとって少しハードルが高い仕事を振ることも有効だと言われるくらいです。
上司として求められる役割の一つに、「部下を育てる」ということがあり、仕事を任せてみるというのはそのために重要な方法です。
あなたが上司の立場である場合は、部下に仕事をどんどん振って力をつけさせることでチーム全体での成果を上げることができます。
②自分自身が新しい仕事に着手できる
他の人に仕事を任せることで、自分の時間に余裕が生まれます。
生まれた余裕で、手がつけられていない問題点の改善や、さらに成果を上げるための新しい仕事に着手することができるようになります。
この仕事によってあなたの仕事がよりよいものになります。
「自分の仕事がなくなるから」と部下に仕事を任せることを嫌がる人がいますが、いつまでも同じレベルの仕事しかしない人は、自分よりも同じ仕事ができる人が現れたらとって代わられます。
仕事を人に任せ、自立して新しい仕事を作り、価値を生み出していく人は会社にとって貴重な存在になります。
仕事を振れない人は出世できない
以上のように、仕事を振ることの重要性について色々とご紹介しました。
ここで、一般的な社長や役員の仕事ぶりを考えてください。
彼らは営業などの現場業務をあくせく働いているわけではなく、会社や事業の方針を示したり、さまざまな判断を下したりといった仕事をしています。
つまり実務は自分で行わず、基本すべて部下に任せていますよね。
そう考えると、組織の中でステップアップしていく途中のどこかで、必ず「人に任せる」という仕事の仕方を身につけなければいけません。
自分が個人事業主として一つのお店や仕事に集中するという場合は、仕事を振るという能力は要りません。
しかし、会社組織のなかで出世するためには「仕事を振る」ということが必ず必要です。
その必要性を改めて考え、少しずつでも仕事を周りに振ってみてはいかがでしょうか。
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