「上司の仕事の振り方が下手で困る」という悩みをよく聞きます。
仕事をしていると、部下や同僚に仕事を振ることが必要になりますが、それには自分で仕事を進めるのとは違う難しさがあります。
そもそも仕事を振ること自体に抵抗があるため抱え込んでしまったり、乱暴に振るために仕事が上手く進まないということが起こるものです。
上手く仕事を振ることが出来る人は、周りの協力を得ながら、色々な仕事を同時進行で進められます。
しかし、そうでない人は一人で仕事を抱え込み、常に締め切りギリギリになったり、体調を崩すということもあります。
仕事の振り方が上手い下手によって、ビジネスでの成功が左右されるでしょう。
そこで今回は、仕事の振り方のコツをまとめました。
仕事を振るのに苦手意識がある人はぜひ参考にしてください。
目次
世の中には仕事の振り方が下手な上司が多い
まずはダメな仕事の振り方のパターンを押えましょう。
「上司の仕事の振り方が下手」という悩みはよく聞きます。
仕事の振り方は会社の中で教わるような機会が少なく、また、意思の疎通さえできれば仕事は振れるだろうと考えがちです。
しかしそれは大間違いで、仕事の振り方に失敗することで、部下のやる気や仕事の出来が大きく下がってしまいます。
下手な上司の仕事の振り方を3パターンご紹介します。
①丸投げをする
丸投げというのは別の記事で紹介しています。
仕事を振ることができない限り、あなたはいつまでたっても辛いまま。
丸投げとは、振る仕事について十分な情報を与えず、質問を受け付けない(「自分で考えて完結させてよ、私は詳しく知らないから」みたいなノリで仕事を振る)という仕事の任せ方をいいます。
この任せ方は上司としては非常に楽ですが、部下としてはたまったものではありません。
どのように進めればいいかわからず、仕事を押し付けられたという気持ちにもなります。
ちなみに、丸投げをしてくる上司への対応はこちらにまとめています
「仕事丸投げ上司」に前向きな気持ちを蝕まれないためのポイント
②ムチャ振りをする
ムチャ振りというのは、「期限や能力的にかなり無理がある仕事を振ること」を言います。
これは、上司がかなり厳しい仕事の指示を断りきれなかったときに、部下にムチャ振りという形で仕事を振るパターンが多いです。
そもそも仕事を受けるときに、相手の言うがままに仕事を引き受けるのではなく、自分たちの処理能力を踏まえたうえで仕事を受ける必要があります。
しかし、上司がこの調整を怠ると、部下へのムチャ振りが生まれてしまいます。
③振りっぱなし
仕事を振った後に、仕上がり具合や中間報告を求めず、相談を受けても流すような態度を「振りっぱなし」と呼びます。
仕事を振った後は、その仕事が完成したかどうかを確認するのが普通です。
振りっぱなしという態度は、振った仕事の確認を放棄しています。
このような仕事の振り方は相手のやる気を失わせます。仕事を振ることへのスキルというよりマインドに問題があると言えるでしょう。
あなたが上司の場合、部下にこのような仕事の振り方をしている限りは、部下の能力も意欲も上がらず、あなたの部署では成果を出すことが出来ないと思ったほうがよいでしょう。
上司から部下への仕事の振り方で意識すべきこと

このように下手な仕事の振り方には色々とパターンがありますが、もちろんその逆の「上手な仕事の振り方」もあります。
あなたが上司の場合、部下や後輩に仕事をスムーズに振るために、以下のポイントを押さえましょう。7つのポイントをご紹介します。
①部下の状態を把握する
仕事を振ろうとする部下の、仕事の埋まり状況を確認しましょう。
新しい仕事を受け入れる余裕があるの状態なのか、それともキャパシティの限界に近いのかを見極めます。
キャパシティの限界にあるようなら、別の人に振るか、その部下が抱えている仕事の締め切りを延ばしたり、誰かに振りなおすという必要があります。
その確認がないまま、キャパシティの限界である部下に仕事を振ってしまっては、その部下を潰してしまいます。
②やり方・期限・中間報告について明確にする
どのような方法でやるか、いつまでにやるか、途中経過の報告をどのタイミングでどのようにやるか、ということを明確にします。
これがあいまいだと、上司と部下の間で様々な行き違いが発生します。
詳しくはこちらの記事の中でも触れています。
仕事を振ることができない限り、あなたはいつまでたっても辛いまま。
③「なぜあなたに振るのか」を説明する
人は仕事を振られるとき、「なぜその仕事を自分がやる必要があるのか」という疑問(場合によっては不満)を持つことが多いものです。
そこで、それに対しての答えを用意し相手に説明します。
このとき、相手から「なぜその仕事を私がするのですか?」と問われる前に説明することが重要です。それにより相手に真摯さが伝わります。
④責任の所在を明確にする
その仕事を振るにあたり、「作業はあなたにやってもらうけど、最終的な責任は上司である自分が負う」という姿勢を明確にします。
これはつまり「責任は私がとるから、思い切ってやってごらん」と部下に伝えることでもあります。
これとは逆に「仕事は任せたよ、上手くいかなかったら責任取ってよね」という言い方をしてしまう上司は、ただの伝書鳩であり、組織に存在する意味がありません。
⑤仕事の結果についてフィードバックする
振った仕事ができあがったら、その結果についてよい点や改善が必要な点をフィードバックしましょう。
上司に適切な形で仕事についての評価をもらうことは、部下にとってやる気を上げる大きな要因となります。
逆に、自分の仕事ぶりについて評価も感謝もしてくれない相手から仕事を振られても、モチベーションはあがりません。
⑥本人を成長させるために仕事を振る
これは仕事の振り方のスキルと言うよりは、マインドの問題です。
人は仕事の実践を通じて成長します。仕事を振るということは、その部下の能力を向上させることと同じです。
この仕事を振ることで、「その部下はどのような成長をするか」「部下を成長させるためにはどのような仕事を振ればよいか」ということを考えて、仕事を振ることも重要です。
部下は、あなたの面倒くさい仕事を肩代わりしてくれる相手ではなく、部署で成果を上げるために成長してもらうパートナーだと考えましょう。
⑦負荷が大きいときはご褒美を用意する
時には部下に大きな負担を強いてしまうこともあるでしょう。
また、ときには特定の部下にだけ、他の部下よりも多くの仕事をこなしてもらう必要もあると思います。
そんなときにはその頑張りに応えるようなご褒美を示してあげましょう。
例としては、ボーナスや昇給(昇格)、長期休暇が挙げられます。
また、上司のあなたにボーナスや休暇を与える権限がない場合は、ご飯に連れて行っておごるというようなご褒美の上げ方もあります。
他部署・同僚に仕事を振るときのコツ
仕事を振るのは部下だけではなく、同僚や他部署の場合もあります。
上司と部下は「上下のつながり」であるのに対し、同僚や他部署の場合は「横のつながり」です。
こういうときはどのような仕事の振り方が効果的なのでしょうか。
それは「相手のメリット・デメリット」を意識させることです。
①メリットの強調
これは、この仕事をやってもらうことで、あなたにこんな良いことがあるんだよ・・というメリットを伝えることです。
例)同僚に書類の入力処理を振りたい場合
「今月の書類の入力処理をお願いしたいんだよね。大変だと思うけど、君が希望する○○部では、入力処理のような事務業務が得意な人を最近求めているようだよ。
前に事務処理のスピードを上げたいって言ってたと思うけど、今回の経験でなれると思うんだよね。私からもコツを伝えるからさ、お願いできないかな?」
という言い方をしましょう。
仕事をすることでのメリットというのは、
・自分のスキルアップ
・社内評判の向上
・待遇の向上
・会社全体のメリットに貢献する
が考えられます。
お願いされた仕事を行うと、相手にとってどんなメリットがあるかというのを伝えてみるとよいでしょう。
なお、大事なのはそのメリットが相手にとって価値あるものであることが重要です。
たとえば経理のスキルアップを目指している人に電話対応の能力が向上するよ、という話してをしてもアピールにはなりません。
②デメリットの強調
これは先ほどとは逆の考えです。この仕事を引き受けてもらえない場合にどうなるか、というデメリットに触れることで、「仕方ないからやるか」と考えてもらうことを狙います。
例)他部署に、部署間の調整をお願いしたい場合
「今営業部と製造部の間でトラブルがあって、今困ってるんだよね。担当者2人の話を聞いて、やりとりを仲介してくれないかな。
このトラブルが収まらないと納期が遅れちゃって、君の部署にも負担がかかってしまうと思うんだ」
このように、お願いしたい仕事がなされないときの相手にとっての不具合を(嫌味にならないように)伝えます。
もちろんこの場合も、相手に関わる不具合を伝えるようにしたいところです。
この例の場合、営業部と製造部のトラブルが相手の仕事に関わりが無い場合、デメリットとしては弱いので仕事へのモチベーションはあがりません。
また、このように同僚や他の部署に仕事をこなしてもらった場合は、お礼をするほか、その手柄を自分のものにしてはいけません。
その仕事ぶりが評価された際には「彼(彼等)の助けがあっての成功です」「この仕事は私ではなく彼(彼等)にやってもらいました」というアピールを忘れずに行いましょう。
仕事は1回きりのものではなく、長く続きます。
本来は相手の手柄なのにそれを自分のものにしてしまうような、不誠実なことをやってしまうと、次は協力してもらえなくなります。
仕事の振り方を上達することもリーダーの仕事
以上のように、仕事の振り方に詳しくなり、上手く仕事を振ることが出来るかどうかが、リーダーやマネージャー(管理職)として成功できるかどうかにかかっています。
仕事を振ることに罪悪感を感じてしまい、自分で仕事を抱え込み失敗するリーダーもいれば、仕事の振り方が下手なために部下のやる気を下げてしまう上司もいます。
「仕事を振る」という行為は、「コミュニケーションが取れれば誰にでも出来る」と考えることが多いですが、実はそうではありません。
適切な振り方をしないと、依頼したとおりの仕事が出来上がらなかったり、丸投げやムチャ振りになって相手のモチベーションを下げてしまいます。
仕事を振ることや、その振り方に苦手意識がある方は、この内容を参考にして、上手く仕事を振れるようになれば、自分も楽になり、これまで以上の成果が出せるようになります。
こちらの記事も参考になります。